No36. 広島の新築マンションの動向と今後について

広島県の新築マンションの着工件数は、リーマンショック前の水準までは戻っていないが、2019年には2,859戸となり、一定の水準を維持しています。2010年から2019年の平均値は2,390戸となっていますが、では成約戸数はどうでしょうか。着工戸数と若干のタイムラグはありますが、ほぼ同様の動きとなっており、概ね2,000戸弱/年で推移しています。毎年約2,000戸ものマンションが売れているのですね。個人的にはかなり多いイメージです。

着工戸数と成約戸数には約400戸程度の開きがあり、これが在庫戸数となっています。2012年以降はその水準で推移していましたが、2017年からは大型タワーマンションが供給されて約600戸と水準が大幅に上昇しています。需要よりも供給が過多となっている現状が伺えます。この供給過多が今後のマンション販売戸数や販売価格にどのように影響してくるのかが気になるところです。

広島都市圏のマンション平均価格は2005年の2,806万円から2019年には4,113万円と46.6%も上昇しています。伸び率はほとんど首都圏のマンションと変わらないですね。広島はまだまだ東京に比べるとなどと言っている場合ではなく、まさに東京などの首都圏の不動産動向と密接に連動していることがわかります。

新築マンションの販売が一定の水準を保っている背景は、もちろん超低金利の継続がありますが、更に、共働き世帯数の増加、高齢者の都心への回帰、防災に対する意識の変化などがあります。

共働き世帯は、専業主婦世帯の約2倍にまで増加しており、お互いの職場に通勤しやすく利便性の良いエリアに購入する傾向が強いことから、駅近等のマンション需要を支えていると思われます。私もまさにその共働き世帯であり、中心地のマンション住まいで、選んだ理由は通勤などの交通の利便性、そして生活至便の観点で選んでいます。

高齢者の都心への回帰は、いわゆる郊外の団地の一軒家から中心部への住み替えであり、中心部での住宅供給数は、やはりマンションが圧倒的に多くなることから、自然と新築マンションの販売を支えていることに繋がっていると思われます。特に、シニア層の転入・転出者数をみると、中心部の中区、南区が転入超過となっており、郊外で高台にある団地が多い安佐南区は転出超過となっています。まさに高齢化が加速し、郊外団地の多いエリアではシニア層の都心回帰による転出者数が顕著に数値に現れてきています。

そして、防災に対する意識の変化ですが、最近は台風やゲリラ豪雨などの自然災害が多発する中で、住宅購入者の防災意識が高まり、住まいに求める価値観に変化が見られます。マンション購入時にお金をかけてでもこだわりたいポイントの中で、どうしても妥協できないポイントについての調査があります。2015年の5年前の調査と2020年では、「災害(台風・水害等)に強いこと」が、2015年12位から2020年4位に大幅に上昇していたり、「災害時の対策・防災設備の配備がされていること」が18位から15位に上がったりと、確かに防災の意識は確実に変化していると思います。そのような災害に強い家、安心して生活できる家として「マンション」が求められているのではないでしょうか。

広島の新築マンション市場は堅調に推移してきましたが、地価や建築コストの上昇を背景に価格の上昇基調が続いており、今後更に価格の上昇が続いていけば、これまで需要を支えてきたパワーカップル(共稼ぎで夫婦ともに高収入)と呼ばれる共働き世帯やシニア世帯にも手が届きにくくなる可能性もあることが懸念されます。大半の予測としては、現在が高止まりで、経済の状態や市況によっては若干減少する可能性があると思われます。「家」を購入する際には、色々と先々まで考えなくてはならないことがあることにあらためて気づかされます。