広島の新築マンションの相場と今後の動向について

■広島市の新築マンションの供給状況

 現在の、広島市の住宅の構成において、持ち家の世帯の割合は69.7%です。その内、戸建ての世帯の割合は52.8%で、マンションやアパートなどの共同住宅に住む世帯の割合は44.9%です。また、広島市のマンション化率は、マンションの総数を世帯数で割った値で計算されます。広島市のマンション総数は97,342戸で、世帯数は561,708世帯です。したがって、マンション化率は約17.33%となります。広島市の住宅は持ち家が主流であり、マンションも一定の割合を占めていることがわかります。

 広島市の新築マンションの着工件数は、リーマンショック前の水準までは戻っていないが、2021年には1,181戸となり、前年比で52.0%増となっていました。では成約戸数はどうでしょうか。着工戸数と若干のタイムラグはありますが、2021年における広島市の分譲マンションの成約件数は、前年に比べて 5.5%減少 しています。成約平均㎡単価は8年連続で前年を上回り、わずかながら +0.2% の増加となっています。成約率は前年より2ポイント悪化し、26%となっていました。

 この統計より、広島市においては新築マンションの供給量は増えているが、需要量が減少していることがわかります。着工戸数と成約戸数の開きは、つまり在庫戸数となります。近年では中心地の開発に伴い、続々と大型タワーマンションが供給され、需要よりも供給が過多となっている現状が伺えます。この供給過多が今後のマンション販売戸数や販売価格にどのように影響してくるのかが気になるところです。

 

■広島市の新築マンションの相場

 不動産経済研究所によりますと、去年、全国で発売された新築マンションの戸数は6万5075戸で前の年より10.8%減少しました。平均価格は一戸あたり5911万円で前年比15.4%アップでした。発売戸数は減少しているのに対し、販売価格は高騰の傾向にあります。

 広島市の新築マンション価格においても、2021年の分譲マンションの平均価格は、約2,390万円(1㎡当たり約32.7万円)でした。前年比では平均価格が約144万円(2.9%増)、1㎡2当たり単価が約2.6万円(3.4%増)となっています。伸び率は首都圏のマンションと比較すると低く感じますが、この価格は5年連続で最高値を更新しており、広島市の新築マンション市場が健全な成長トレンドにあることを示しています。広島はまだまだ東京に比べるとなどと言っている場合ではなく、まさに東京などの首都圏の不動産動向と密接に連動していることがわかります。

 新築マンションの販売が一定の水準を保っている背景は、もちろん超低金利の継続がありますが、更に、共働き世帯数の増加、高齢者の都心への回帰、防災に対する意識の変化などがあります。共働き世帯は、専業主婦世帯の2倍以上にまで増加しており、お互いの職場に通勤しやすく利便性の良いエリアに購入する傾向が強いことから、駅近等のマンション需要を支えていると思われます。私もまさにその共働き世帯であり、中心地のマンション住まいで、選んだ理由は通勤などの交通の利便性、そして生活至便の観点で選んでいます。

 

■新築マンションの今後の動向

 高齢者の都心への回帰は、いわゆる郊外の団地の一軒家から中心部への住み替えであり、中心部での住宅供給数は、やはりマンションが圧倒的に多くなることから、自然と新築マンションの販売を支えていることに繋がっていると思われます。特に、シニア層の転入・転出者数をみると、中心部の中区、南区が転入超過となっており、郊外で高台にある団地が多い安佐南区は転出超過となっています。まさに高齢化が加速し、郊外団地の多いエリアではシニア層の都心回帰による転出者数が顕著に数値に現れてきています。

 そして、防災に対する意識の変化ですが、最近は台風やゲリラ豪雨などの自然災害が多発する中で、住宅購入者の防災意識が高まり、住まいに求める価値観に変化が見られます。マンション購入時にお金をかけてでもこだわりたいポイントの中で、どうしても妥協できないポイントについての調査があります。5年前の調査と2021年では、「災害(台風・水害等)に強いこと」が、2016年12位から2021年4位に大幅に上昇していたり、「災害時の対策・防災設備の配備がされていること」が18位から15位に上がったりと、確かに防災の意識は確実に変化していると思います。そのような災害に強い家、安心して生活できる家として「マンション」が求められているのではないでしょうか。

 広島の新築マンション市場は堅調に推移してきましたが、地価や建築コストの上昇を背景に価格の上昇基調が続いており、今後更に価格の上昇が続いていけば、これまで需要を支えてきたパワーカップル(共稼ぎで夫婦ともに高収入)と呼ばれる共働き世帯やシニア世帯にも手が届きにくくなる可能性もあることが懸念されます。大半の予測としては、現在が高止まりで、経済の状態や市況によっては若干減少する可能性があると思われます。「家」を購入する際には、色々と先々まで考えなくてはならないことがあることにあらためて気づかされます。